【無能令嬢、愛され姫と化す。】

「お父様、なぜこんな卒業式の直前に......?」

「あぁ、それはな、忘れてただけだ」

「へ?」

現当主が娘にとってとてつもなく大切なことを「忘れた」。

圦薇は呆れた。否、呆れるしかなかった。

「てっきり私も伝えてるものだと思ってたのよ〜ごめんね〜」

そんな軽く済むものではないが、優しい圦薇によって両親は許された。

がっくりと肩を落として、圦薇は部屋へ戻っていった。

圦薇の部屋は一番上の階にある。

黒のような紫でまとめられた部屋に、金色のアクセントが目を引く。

まさに豪邸の中の一室だ。

否、実際に豪邸に住んでいることには間違いないのだが。