私の言動を前に、複数から息を呑むような音が聞こえた。
戸惑いが大きいのだろう。
おじいちゃんは何も聞かずに受け入れてくれたが、むしろこの反応が一般的だと思う。
「「………」」
誰も口を開いてくれない。
やっぱり、怒っているのかな。
まぁ、そりゃそうだよね。
「あー腹減った減った〜。あれアニキたちまだそんなとこにいんの? え、なにしてんの? 足そんなに痺れてんの?」
廊下から元気な足音がして、襖から顔を出したのは、明るめの甚平に着替えを済ませたキラさんだった。
頭を下げていた私を見て不思議そうにしている。
なんつータイミングだよキラさん。
良いのか悪いのか分からないわ。
そもそもどうしてパンツ一枚でうろついていたのか謎だけど、派手めなデザインの甚平は彼に良く似合っている。
「キラ……てめぇってやつは、本当に空気の“く”の字も読めねぇのかよ!」
「ドタドタ煩いんだよ!」
「え? なんでオレ怒られてんの????」
キラさん、良いキャラですね。
今のでかなり場が和みました。
「ったく……八重お嬢、俺たちにそんな頭を下げないでくだせい」
不意に声をかけてきたのは、昨日、私になるべく帰りを早くするように助言してくれた男の人だった。
最近、物騒な事件が多いとかで心配してくれた。
たしかその時も私は、イライラしていて強く当たってしまった。
「さっきのお嬢と親父の会話を聞いていやした。だから、お嬢の気持ちは十分伝わってます」
その人は懐かしむような面持ちで続ける。
「本当のお嬢は……昔から優しい子だったんですよ。それが今……戻ったってだけです」
…………え?
私が昔から優しい?
それは、昔は優しかったってこと?
そんなはずはない。今世の私は昔から意地悪で自分勝手で。
……あれ?
というか私って、いつから堂島組にお世話になっているんだっけ?
「アニキたちってば皆して何の話ししてんの? もう居間に朝ご飯運ぶ時間じゃん?」
「うぅ、うるせーよキラ! 今いいところだってのにっ」
「ぐぇっ」
キラさんはまた頭をど突かれていた。
堂島組の皆は軽く涙目になっていた。
何事かと思ったけど、私の変化が嬉しくて感動していたみたい。
涙腺が緩んでいたのは主に年長者。驚いていたのは若者組。
若者組は影で私を悪く言っていたことを恥じて頭を下げてきた。
むしろ私が土下座したいくらいで、というかしようとしたら全力で止められてしまったけど。
なんだか、和解が上手くいったみたいで嬉しかった。



