「どうだ?瑞生のところは」
「よくしてもらってます」
紫藤怜の大きな背中の後ろ。
少しだけ空けた距離。
紫藤怜の吐き出す煙草の煙が、私たちの間に漂っていた。
車の前に立つと、運転席にはあの日と同じ。
多夜も居る。
ピー、とスライドドアの自動開閉音が鳴る。
こちらを向いた紫藤怜に、先に乗れってことかと察したけれど。
私は足を止めた。
「え、なに」
前を通ろうとした私のキャップを、紫藤怜が奪ったからだ。
「上から下まで悲惨なのはあの日と変わらねぇな」
帽子がなくなった顔はすっぴん全開。
返してほしい、と彼の手にあるキャップに手を伸ばせば、次は前髪をめくりあげられた。
「いや、多少はマシか」
こちらを覗き込む顔が近い……。
恥ずかしくて、思わず両手で顔を隠した。

