「立てよ。行くぞ」
困った顔をしていたことだと思う。
だって実際困ってる。
昨日、潤はなんて言ってたっけ。
「どこに行くんですか?」
「車」
シドは立てた親指で後ろを差す。
後方には見慣れた黒くて大きな車体。
紫藤怜には逆らうな。
紫藤怜には関わるな。
……ねぇ潤さん。
私はこの場合どちらを優先すればいいんですか。
自分ではとても判断がつかなくて、サンコンを見る。
彼はこめかみに青筋が立つほど奥歯を噛みしめていた。
「彼女は戻ってくるのでしょうか」
「当たり前だろ。何のために世話寄こしたと思ってる」
それを聞くなり、サンコンは私に背を向け歩きだす。
それならもう、私だって。
この少し恐ろしい紫藤怜に着いて行くことにした。

