君と歌姫はじめました!

「……ねぇ、有栖」

「んー?」

歌の途中。

有栖がころんと寝返りを打つ。

零は少しだけ迷ってから、静かに口を開いた。

「動画、出してみない?」

鼻歌が、ぴたりと止まった。

「……へ?」

間の抜けた声だった。

有栖は数秒遅れて言葉を理解したみたいに瞬きを繰り返し、

それからばっと勢いよく上体を起こした。

「ど、動画って……何の?」

綺麗な黒髪がふわりと跳ねる。

零はそんな有栖を見ながら、少しだけ困ったように笑った。

「歌の」

「……歌ぁ?」

心底意味が分からない、という顔だった。

「いやいやいやいや」

有栖は慌てて両手を振る。

「なんで!? 急に!? え、怖っ、何その話!」

「怖がる話じゃないでしょ」

「だって動画って、あの、ネットに出るやつだよね!? 

世界中の人が見るやつ!?」

「まあ、見る人がいれば」

「やだよ!!」

即答だった。

零は思わず吹き出す。

「即答だ」

「当たり前じゃん、無理無理無理! 

私そういうの向いてないし!」

「向いてると思うけど」

「向いてない!」

有栖はクッションを抱え込んで唸った。