君と歌姫はじめました!

二人の母親は高校時代からの親友で、

零と有栖も、生まれた時からほとんどずっと一緒だった。

幼稚園も。

小学校も。

中学も。

そして今の高校も。

もはや家族ぐるみどころではない。

有栖の部屋のクローゼットに、

零が泊まる時用の布団が普通に入っているくらいには。

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

「はーい」

有栖の母はにこにこ笑いながら部屋を閉める。

ぱたん、と扉が閉まって。

数秒後。

「……改めて考えるとさ」

有栖がぽつりと呟いた。

「零って、うちに馴染みすぎじゃない?」

「今さら?」

「いや、すごい今さらなんだけど」

零はくすっと笑いながら、散らかったプリントをまとめ始める。

その手つきも自然すぎて、有栖はなんだか妙におかしくなった。

「なんかさー……」

「うん?」

「ほぼ半分うちの子だよね」

「それ有栖のお母さんにも言われたことある」

「やっぱ?」

有栖はへらっと笑う。

零がいるのは昔から当たり前だった。

隣にいるのも。

同じ時間を過ごすのも。

だからきっと、さっきの『動画を出そう』なんて突飛な話も。

不思議なくらい自然に受け入れられたのかもしれない。

零となら。

きっと大丈夫だと思えたから。

階段を降りると、ふわりと味噌汁の香りが漂ってきた。

「うわ、いい匂い〜……」

「今日唐揚げだ」

「えっほんと!? 勝った!」

「何に」

「人生」

意味の分からないことを言いながら、

有栖はぱたぱたとリビングへ駆け込む。

ダイニングテーブルには、出来立ての夕飯が並んでいた。