その声と匂いは私の精神安定剤

私、柊 叶(ひいらぎ かなえ)の睡眠導入剤兼精神安定剤とも言えるお気に入りの動画がある。それは無料の動画サイトに投稿されているASMRの動画である。そこ動画投稿している人の声が声フェチの私にとってどストライクの声でそして疲れた身体を夢の中へと誘ってくれるのだ。しかし、こんな私が彼氏なんて出来るわけはないし、なんなら話をすると男性に苦笑いされて引かれていくのがお決まりの流れである。だからもう言うをやめて女の子らしい趣味にして話を進める。しかし、声フェチの私は声で色々考えてしまう癖がある。素敵などストライクボイスに出会うともう聴き惚れてしまうのだ。
その声しか受け付けなくなってしまうのが、私の特徴である。しかし、完全にドストライクの声に出会ったことは今まで出会ったことがまだいないのだ。こんな私はもう、27歳。早く彼を見つけてこんな一人で寂しい生活ともおさらばして静かに眠りにつきたいものである。

そんなことを日々考えて会社に出社しているものの、そんな生活は簡単には来ないわけで、溜息をつきながら机に向かう毎日を送っている。パソコンと電話対応を繰り返し行っている中でSNSの通知がきているのに気づき何気なしに通知をタップしてしまった。しっかり見なかった私が悪いのだが精神的なダメージを負わされた。それは、仲の良かった子の結婚報告の投稿だった。彼氏もいなければ、出会いすらなくズルズルと20代後半を迎えたなか仲良しの子はみんな結婚、妊娠と女性の幸せの象徴とも言えるイベントを迎えてきている。それに比べて私はどうだろうか毎日仕事の忙しさに終われ帰っても迎えてくれる人はおらず、好きな声に癒されて寝るという20代後半がなかなかするような行動とは思えないことをしている。私は考えて悲しくなってきたため、【おめでとう。お幸せに。】のメッセージを送ってそっと画面を閉じた。閉じた後にまた、素敵な声を聞いてストレス発散だなと深く考えていたと同時に友達の幸せを素直に祝えれない自分に苛立ちを覚えた。
パソコンを打つ音がそれを物語っていたのだろう。私はそのイラつきのせいで気づかなかった。

「何イラついてんだ?」
耳元に響いた低音で落ち着いた声。私の身体に雷が落ちたように電流が流れる感覚がした。

「え!?」

身体をはねらす私に先輩も一緒に驚いていた。

「おいおい、俺のこと気づいてなかったのかよ。びっくりした。タイピングが強いから何かにイライラしてるのかと思ってたけど」

頭を掻きながら話しかけてくる先輩。私はその言葉よりもさっきの声が耳から離れず、意識してなかった先輩の声をこの瞬間で意識していくようになった。