ゆずくんが、ふと思い出したように言う。
「あ、そういえば兄ちゃん今度メンズ雑誌で特集されるらしいよ」
「えっ!?」
私は勢いよく反応した。
「しかも彼女役、朝倉莉子(あさくらりこ)さんなんだって」
「朝倉莉子!?あの人気モデルさん!?」
「うん」
絶対合うじゃん……。
美男美女すぎる。
そう思った瞬間。
胸の奥が、ちくっと痛んだ。
……え?
なんで。
私、今――。
不思議に思っていると、電車がゆっくり駅へ滑り込む。
「あ、着いた」
ゆずくんがそう言って先に降りる。
私は慌てて後を追いかけた。
夜風が、少しだけ火照った頬を冷やしていく。
「いっちゃん?」
「えっ?」
「今日なんか変」
ゆずくんが、不思議そうに私を覗き込む。
「そ、そんなことないよ!?」
「ふーん?」
疑うように笑われる。
絶対バレてる気がする……!
だって今日は色々ありすぎた。
玲央くんにBLメモ見られて、壁ドンまでされて。
しかもあんな距離で囁かれて。
思い出した瞬間、また顔が熱くなる。
するとゆずくんが、じっと私を見た。
「……やっぱ何かあったでしょ?」
「気のせい!!」
慌てて前を向くと、後ろから小さく笑う声が聞こえた。
「いっちゃんって、ほんと飽きないよね」
「っ……!」
心臓がどきっと跳ねる。
私は誤魔化すみたいに足を早めた。
けれど……
頭の中には、夕焼けの生徒会室で笑っていた玲央くんの顔が、ずっと残ったままだった。



