尊い推し兄弟に愛されてます!?

ゆずくんは俯いたまま、小さく笑う。

「……やっぱり、いっちゃんらしいね」

「え?」

「ちゃんと相手のこと考えちゃうところ」

そう言って少しだけ目をこすった。

……笑ってる。

笑ってるのに。

今にも泣きそうだった。

「俺さ」

ゆずくんは空を見上げる。

「こんなにちゃんと振られたの、初めてかも」

「……」

「結構ショック」

「ゆずくん……」

「でも」

もう一度私を見る。

その笑顔は少し寂しかったけど、どこか吹っ切れたようにも見えた。

「兄ちゃんには負けたくない」

「え?」

「だから俺、もっとカッコよくなる」

「……」

「兄ちゃんがモデルなら、俺は俺のやり方で」

少し照れくさそうに笑う。

「いつか『あの時、俺選べばよかった』って思わせるくらい」

思わず苦笑してしまう。

「そんなこと思わないよ」

「言い切るなぁ」

ゆずくんも笑った。

「でも、それくらい頑張るってこと」

その言葉は、強がりなんかじゃなかった。

「うん……」

「でも、俺が勝手にいっちゃんを想うのは自由でしょ?」

「……」

「ちゃんといっちゃんの邪魔はしないし、兄ちゃんにも何もしない。だから……好きでいさせてほしい」

もう恋人にはなれない。

私の中ではそう決まっていても、ゆずくんはまだ吹っ切れてるわけじゃないもんね……。

「うん、わかった」

そういうと、ゆずくんは少しだけ安心したように笑った。

この幼なじみとの時間までなくなってしまうのは嫌だ。

そう思うのは私のわがままなのかな。


夕焼けに染まる帰り道を、二人は静かに歩き続けた。

隣を歩く距離は昨日までと何も変わらないのに、私たちはもう昨日までと同じ幼なじみではいられない気がした。