『お姉ちゃんだから』と我慢し続けてきた令嬢、ついにブチ切れる





 翌朝、私には一片の記憶も残っていなかった。

 視界に飛び込んできたのは、床に転がる大量の空瓶。
 そして、どんな窃盗団が襲ったとしてもここまではやるまいというほどに――千の刃で滅多打ちにされたかのごとく、無残に切り裂かれた食堂の壁紙と調度品だった。

 一体、ここで何が起きたのか。

 恐る恐る足を踏み入れた朝食の席には、なぜか晴れやかな表情のフルールと、目元が赤いが少しばかりすっきりした面持ちの継母。
 そして、見たこともないほど悲壮な形相で私に頭を下げる父がいた。

「お、お姉ちゃん……恐れながら、切なるお願いがございます……」

 震える声で切り出したのは父だった。

「……聞きましょう」

「お酒は……どうか、お酒だけは、当分の間お控えいただきたく……っ!」

 隣で継母も、祈るような手つきで深く、深く頷いている。

 ズキズキと痛む頭を押さえ、目の前の惨状から静かに目を逸らす。私は深酒でしゃがれた声を絞り出し、短く答えた。

「……わかったわ」