「だからそれは無理って言ったでしょう?」
ユーリと会ってしまったら心が揺らぐ。離れたくなくなる。完全に個人的な感情だけど。
「会いたかったら一人で会いに行って」とやや冷たく思われるかもしれない言い方で言うと
「あたし、こう見えても子供好きなのよね~、ユーリと最後に会ったのはいつぶりぐらいかな。もう4歳?」
「そうよ」
心音が子供好きなのは知っている。ジョシュと順調にいっていたのなら自分の子供を持つことだってあったかもしれない。
その未来を奪ったジェシカが心から憎い。けれど憎しみからは何も生まれない。結果として心音はジョシュと別れ、ジョシュはお飾りの女と結婚した。心音はジョシュを吹っ切る為か、オトコ遊びを繰り返し、結果二人に何も残らなかった。
「ねぇ」心音がパウダールームの椅子の背もたれに腕を乗せ振り返り
「あんたたち…ケートとあんた早く仲直りして子供作ったら?」と、とんでもないことを言い出しあたしは思わずみっともなく口を開いた。
「何言い出すのよ」
「だってぇ、子供とじゃれ合いたいんだもの」
「それは心音の趣味でしょ。簡単に行かないわよ」
でも―――そうね、啓と元に戻って、もし結婚したのなら子供は欲しい。啓との子供だからユーリと違って純日本人の顔になるだろう。性格は―――明るく天真爛漫な啓に似て欲しいと思う半分、時々考え無しで行動するからそう言うところはあたしに似て欲しいな。
顔は―――?男の子だったらやはり啓に似てほしい。きっと可愛い子に育つわ。大きくなったら少し生意気になるかもしれないけれど。女の子だったらあたしに―――
と考えてると
「なぁーに考えてるの」
ふふふ、と心音が怪しい笑い声をあげていつの間にか立ち上がったのかあたしの肩を揉む。
「大したことは……」
「ふーん、その割には顔が赤いわよ。まだチークも塗ってないのに」
「のぼせただけよ」心音の手を払ってあたしは指摘された両頬を掌で包んだ。
あたしったら……何想像してるのよ。そんな未来、絶対的な何かが約束されてるわけじゃないのに。
そんなことを考えていると
TRRRRR……
あたしの電話が鳴ったことも気づかず鏡の中でぼんやりとした自分の姿が浮かんでいるのを眺めていると
「瑠華~電話~」
とテーブルに置いたスマホを心音が手に取りふらふら。
「着信Mってなってるけど、もしかしてマックス?」
鋭いな。
「そうよ、無視し……」てと言い終わらないうちに
「Hello~♪」と心音が勝手に電話に出ていた。



