Fahrenheit -華氏- Ⅲ


「それ!その案に乗ったの!?」思わず瑠華の両腕を掴んで勢い込むと瑠華は顔を歪めて


「まさか。あの男に触れられるだけで…いいえ、同じ空気に居るのさえ嫌なのにその気になれませんよ。


万が一、百億が一そう言う流れになったとしてもジェシカはまた子供だけ奪って離婚させる筈。あたしは二度と子供を失いたくない」


最低な親子だな!


俺は瑠華とマックスが抱き合っている姿を想像して吐きそうになった。


てか、何でマックスは今頃になって瑠華との復縁をそこまで執拗に迫って来るのだろう。


確かに瑠華ほどいい女は居ないが、向こうには瑠華には及ばないかもしれないがそれなりのレベルの女いっぱいいるだろうに。それにあの見てくれだ?カネもある。選り取りみどりな筈だろう。


俺は頭痛を堪えるような仕草で額に手をやっている瑠華の向こう側、東京のまばゆいネオンが輝く夜景を眺めながら目を細めた。そこは宝石を散りばめたようにキラキラしている。その輝きの中でマックスの中に特別な輝きがあるのだろうか。


だけど瑠華じゃないといけない理由。何かある筈だ。


まぁ俺も瑠華じゃないとダメなんだけどね。


ちょっと冷たいし、怒ると怖いし、男らしいとこあるし、たまに抜けてるところあるけどそこがいいって言うか。きゅん!してる場合じゃないって!


「あの男ニューイヤーまでいるそうです。カウントダウン家族三人でやらないか、って」


なっ!!


俺だって瑠華とカウントダウンしたいってのに、二村の妨害にあってできない状況だってのに。


瑠華の最愛のユーリを奪っておいて図々しすぎる!


「……で…どうするの?カウントダウン…」


マックスはさておき、ユーリは瑠華にとって最愛の娘だ。一緒に過ごしたいに違いない。


しかし瑠華の答えは意外なものだった。


「しませんよ、あんな男とカウントダウンなんて。来年一年厄年でもないのにサイアクな一年になること間違いないです」


俺は心の中でちょっと笑った。


くくっ、ここまで言われていいザマだぜ。色男も台無しだな。


「啓は―――?」


瑠華が額から手を退けてふと俺の方に顔を向けた。まっすぐな視線と目があった。


「え?」


「啓はカウントダウン、瑞野さんとするんですか」


瑞野さんと―――?そこまでは要求されてない(今のところ)


俺は大きなため息を吐き


「また面倒に巻き込まれちゃ適わねぇ。今度こそハッキリと断る」


瑠華はちょっとまばたきをして少しばかりほっとしたように胸を撫でおろした。





「俺は瑠華と――――」