Fahrenheit -華氏- Ⅲ


瑠華が寝てる間に瑞野さんが瑠華に何か言ったり嫌がらせしたりするかもしれない、と最初は心配で何度もそっと寝室を覗いたがそれは杞憂に終わった。二人はすぐに眠りに入ったようで、隣り合って眠る二人はまるで姉妹のように仲が良さそうに見えた。


さっき用があるって言って10分程席を外した瑠華は一体何をしにいったのだろう。と、冷静になれたときようやく考えが浮かんだ。


てか瑠華は何で俺がこの部屋に泊まってることを知ったんだろう?まさかGPSでも仕込まれてる?と一瞬疑ったが、瑠華に限ってそんな無粋なことをする筈もないだろう。てかさっき瑞野さんのSNSを見たって言ってたじゃねーか。ヤバイな、俺……ちょっと前の記憶ですら飛んでるや……


しかし二村のヤツ、あくどい手を使いやがって。俺が瑞野さんをストーカー?ふざけんじゃんねぇ!


ある意味こっちの方が被害者だっつうの!


元々瑞野さんが強引にくっついてこなけりゃ問題なかったって言うのに。


忘れかけていた苛立ちが再来してギリギリと歯ぎしりをしていると、寝室の扉が開いた。


最初、瑞野さんが具合を悪くしたのかと思ったが、出てきたのは瑠華だった。瑠華はこちらを振り返ることもせずまっすぐにバスルームに向かった。


トイレか?


と思ったが、十分程出てこなかったからちょっと心配した。


ちょっと無粋かと思ったが心配だったのもある。


「瑠華?……」


遠慮がちにバスルームをノックしても中から返事がない。意を決して少しだけ扉を開けると瑠華は洗面所に両手をついて項垂れながらも鏡を睨んでいるようだった。


「瑠華……?」その様子がちょっと異常に思われれそっと声を掛けると、顔を洗ったのであろうかその顔に化粧けはなく、僅かにふり返ると「すみません、起こしてしまいましたか?」と無表情に聞いてきた。


「いや、起きてたから大丈夫だけど。どうした?何かあった?」瑞野さんと何かあったとか…?とは口にはできなかったが。


「嫌な夢を見まして。また眠ると夢を見そうで瑞野さんを起こしてしまうかもしれませんので」とタオルで顔を拭いながら瑠華は淡々としていた。


嫌な夢、が何なのかどうか分からないが瑠華がそこまで考え込む夢とは相当な悪夢に違いない。