Fahrenheit -華氏- Ⅲ


こう見てたら瑠華と瑞野さんて雰囲気が似てるけど、やっぱ真逆って言うか……


「瑞野さん、一人で子供を産んで育てると言った場合、時には媚びることも大事かもしれません。けれど母親になると言うことは何より自分がしっかりしないといけないのですよ」


瑠華の言葉に瑞野さんは目をぱちぱち。


「はい……分かってます。


あたしにはその覚悟が足りないことも十分に……」


じわり……瑞野さんの目から涙が溢れだした。


わ!泣かせちゃったよ!どうしようっ!


一人あわあわしている俺をよそに瑠華は瑞野さんにそっと歩み寄り


「きついことを申し上げました。私が悪かったです。今夜も疲れたでしょう。ゆっくり休んでください」と瑞野さんの背中を優しくさする。


「でも柏木補佐は…?部長は…?」


「部長と私はソファを借ります。幸い大人二人寝られない程の大きさではないので」


え!瑠華と二人っきりで!!


ドキドキしていると


「柏木補佐も……一緒に寝てくれませんか…」と瑞野さんが言い出し、瑠華の袖をきゅっと握った。まるで小さな子供が母親に添い寝をお願いしている雰囲気にも見れる。


瑠華は俺の方を一瞬向いたがすぐに瑞野さんに向き直り


「しかし私が居たら落ち着かないのでは…」と言葉を濁した。


瑞野さんは首をゆるゆると振った。


「あたし―――柏木補佐と居ると安心するんです」


瑠華は困惑しているようだったが、そこまで言われたら、と言う意味でか小さく頷き瑞野さんの手を取ると立ち上がらせた。


「ちょうど良かった、私も結構お酒を飲んだので眠たかったのです」


瑠華の言葉に瑞野さんが顔を上げ、顔にちょっと笑顔を浮かべた。


「と言うわけで私は瑞野さんと一緒に休みます。部長、ソファで申し訳ございませんが」


「いいよ、いいよー、俺はどこでも寝れるし」と苦笑いで手をひらひらさせると二人が寝室に消えていくのを目で追った。