Fahrenheit -華氏- Ⅲ


「私は少し用事がありますので席を外しますが10分程で戻ってきます。刑事たちがまた来たときにうまく対応するのに私が居た方が都合がいいでしょう。今日は私も泊まります」


ええ!?それは嬉しいが…瑞野さんと三人って超びみょ~!


でもなぁ、万が一瑞野さんに何かあったとき出産経験者が居た方がいいだろうしな~


瑠華は自分の発言通り部屋を出て行ってそこから10分経った。その10分瑞野さんはひたすら平謝りしていた。それは演技ではないように思えたが…


油断はするな啓人!


しかし…瑠華が瑞野さんからデータを盗んだことバレてはなさそうでそこはちょっとほっ。


安心すると今まで忘れていた空腹がやってきて腹が鳴った。


ルームサービスで頼んだ料理はすっかり冷めていたが新たに頼み直すより残ったのを食うのが手っ取り早い。食品ロスにもつながるしな。


SDGs!


食べかけだった柚子バターソースと雲丹のクリームパスタに手をつけると麺はのびのびでカピカピしていたし、雲丹の風味はすっかり飛んでいた。お世辞にもうまいとは感じられなかたっがとりあえず腹に入れば何でもいい。


「お待たせしました」瑠華が帰ってきたときパスタは残り四分の一程度になっていた。


「瑠……柏木さんも何か食べる?冷めちゃってるけど」と一応進めると


「お腹は減ってません」と答えが返ってきた。


何となくは想像してたけどネ、瑞野さんも居るだろうけどネ、事情はどうであれせっかくホテルに居るわけだし、曲がりなりにもさっきちょっと良い雰囲気になったのにネ……


くすん


と拗ねてると、クスっ、瑞野さんがちょっと笑った。


「お二人って会社に居る時と全然変わりませんね」


ええ、そーですとも!!


「私はどんな男性でも媚びることはしません」と瑠華はきっぱりはっきり。


ええ、そーですとも…


「だから生きづらいこともありますけれどね」


ふぅ、瑠華は小さくため息を吐いた。


「媚びるときが楽なときもありませんか」と瑞野さんが大きな目を上げる。




「自分の人格を殺してまで楽に生きていたくないのです」




なるほど…


瑠華!かっこいいな!