Fahrenheit -華氏- Ⅲ


♠ K ♠

20XX年11月4日


次の日、俺は久しぶりにすっきりと目覚めることが出来た―――…


瑠華が東京の夜景に呑み込まれるのを見ずに済んだ。


が…


時計を見ると朝の8時で…


何で!?アラーム掛けてたのに!


「嘘!」


思わず叫びながら飛び上がり、そこからが時間との闘いだった。


二村、とりあえず出社時間まではお前との闘いは一時休戦だ。


―――なぁんてかっこつけたけど!


ドタッバタっ!


それはそれは大戦争だった。


その大戦争に打ち勝って何とか出社。時間は就業時間の15分前で


ふぅ、やれやれ。と額を手で拭っていると


瑠華と佐々木は何やら楽し気に話していた途中で


「あ、おはようございます~、珍しいですね、部長がこの時間」
「おはようございます」


「あ、うん…ちょっと寝坊」


と一応は挨拶したものの、


「気に入ってくれたんですか!」


「はい、でも絵と文字が追いつかなくて…二時間も掛かってしまいました」


「二時間も!?あ、じゃー、僕のDVD貸しますよ。その方が早いし分かりやすいかも」


「ご厚意に甘えます」


な、何!?


何の話!?


瑠華は相変わらずの無表情だったが、佐々木は妙に楽しそうで…


何の話だ!?


二人の話は就業時間まで続いていて、9時になるとそれぞれ大人しくPCに向かっていたが


『気になる、気になる、気になる!』


俺は相変わらず『気になる』をPCのモニターに連発。


すると綾子から社内メールが届いた。


“送信者:木下 綾子

宛先:神流 啓人

件名:Re:Untitled


私のスリーサイズのこと?


「はぁ?朝から何言ってんだ、こいつ」


と思わず顔を歪めて独り言を漏らすと、瑠華と佐々木が怪訝そうに俺の方を見ていて、俺はコホンと空咳をして、画面をスクロールした。


“----- Original Message -----
From: 神流 啓人
To: 木下 綾子
Sent: Fryday, November 4, 2011 09:02 AM
Subject: Untitled


>>気になる 気になる 気になる!


………


「やっちまった…」


しかも二回目。(一回目はレイズの髙木さんだったな)※Fahrenheit Ⅱ 参照


まぁいっか。社内メールだし…


「て、良くな~~~い!」


ガタっ!


椅子をがたつかせながら勢いよく立ち上がると、今度は二人がビクリと肩を震わせた。


だって俺、綾子と裕二と桐島三人に同時メール送っちまったんだぜ!?