「で?どこに向かうの?」
運転席に落ち着いた葵さんが尋ねてきてあたしはさっきの瑞野さん……もといミミちゃんのSNS画像を見せた。
「このホテルに向かってください」
「え…?でもミミちゃんオトコといるんでしょ?流石に修羅場になるんじゃ…」
「そのオトコは私の知り合いです」
「もっとマズイじゃん」葵さんはすでに戦意喪失と言った感じでハンドルに項垂れる。
「瑞野さんに危害を加えるつもりも言い合うつもりもありません。ただ、私は自分の見たことしか信じないので。彼がどうして瑞野さんと一緒に居るのか理由を知れたら大人しく帰ります」
あっさりと言うと
「瑠華ちゃんの性格はもう大体分かってるけどさー」
「なら大人しく出発してください。勿論深夜料金は払うつもりですからご安心を。しかし詮索はしないでください」
「いや、カネはいらねーけど。でもホントに大丈夫ぅ?」
「心配してくださってありがとうございます。では”話し合い”が終わるまで待機してくださいますか?」あたしが提案すると葵さんは大きな目をパチパチ。
「うん、それなら。何かあったら絶対連絡してよ。すぐ駆けつけるからサ」
頼もしいことで。
―――――
――
ナビの案内だと車を飛ばしてその場所は20分程度の所にある。
「ホテル名は分かっても部屋が分かんなきゃ入れないじゃん。まさかその”知り合い”に聞くの?入れてくれないんじゃない?」葵さんは少し含みのある言い方をしたが、心ここにあらずであまり考えられない。葵さんが運転しながらちらりとあたしの方を見てきた。意外だ、葵さんは運転がうまい。
それに葵さんの質問も予想済みだ。
「手は打ってあります」
あたしはスマホを手にすると瑞野さんがハッシュタグが付けられたホテルに電話をした。
『お電話ありがとうございます。こちらはハイウッドホテルでございます』と深夜だと言うのに男性のホテルマンが丁寧に出てくれた。
「ちょっとお聞きしたいのですが、そちらにカンナ ケイトって名前で宿泊者居ます?」とストレートに聞くと
『申し訳ございません。お客様の情報は…』
これも予想済みだ。次に出る行動は考えてある。少々乱暴だが。
「うちのバカ亭主がアホ女をそのホテルに呼んだのよ!こっちはその二人が手を繋いでホテルに入っていく証拠だって握ってるんだから!あの男、周到にも連れの名前も偽名を使って。離婚裁判になったらホテル名が明らかになるわよ。いい?世間の目にさらされたくなかったら部屋の号数を言いなさい!」
普段はまるっきり使わない口調に葵さんが隣でびっくりしていたようだが
『わ、分かりました!すぐお調べします』とホテルマンが慌てる。
その言葉を聞いてあたしはにやり。葵さんも運転しながらくっくっと笑いを堪えている。
「やるね、瑠華ちゃん。最高にかっこいいよ!」



