部屋はデラックススイートで、寝室が二カ所。部屋に帰りつくとあたしは主寝室にユーリを連れて行きベッドに寝かしつけた。
ベッドに横たわったユーリはあたしの袖をきゅっと握ってきて
「Mommy doesn't sleep with you?(ママは?一緒に寝ないの?)」と眠そうに目をこすりながら聞いていてあたしは苦笑いを返した。
「Mommy has to talk to Daddy. I'll see you later.(ママはパパとお話があるから後でね)」
後―――なんてきっとない。起きたらユーリ一人だけでまた悲しんで、もしかして泣き出してしまうかもしれない。
けれど今はそれを言うのが精一杯。
ユーリはすぐにうとうとして目を閉じ完全に眠りに入ったようだ。
可愛いわが子の寝顔はどれだけでも眺めていたい。サラサラの前髪が滑り落ちて露わになった白い肌にキスを落とす。
「愛してるわ、ユーリ」
リビングと思われる部屋まで戻ると、マックスはいつの間にかローテーブルの上にいくつかの料理と赤ワインのボトルを用意していた。
「What are you doing?(何やってるのよ)」
目を細めて思わず腕を組むと、マックスはしれっとして「I thought I'd eat with you. The one I had earlier was good in its own way, but it wasn't enough.
(君と食べようと思って。さっきのはあれであれでうまかったがやっぱり足りなかったしな)」
「I'm sorry, but you're on your own. I'm leaving.(悪いけど一人で食べて。あたしは帰る)」バッグをひっつかむとコートを羽織り帰り支度。
「Why don't you stay the night?(泊まっていかないのかい?)」当然のように聞かれて「はぁ!?」思わず顔を歪めた。
マックスは何かいけないことを言ってしまったかのように大げさに肩をすくめてみせて
「There's no way I'm staying here. It's over between you and me.(泊まっていくわけないじゃない。もうあたしとあなたとは終わってるのよ)」とつっけんどんに言うと
「I didn't say I would sleep with you. It's July who sleeps with me. July will be very sad when he wakes up in the morning, won't she?
(一緒に寝るとは言ってない。一緒に寝るのはユーリだ。朝、目が覚めたらユーリはさぞ悲しむだろ?)」
それは―――想像してなかったと言ったら嘘だ。
「I'll sleep in a bed in a different room. I'll have Tim standing in front of your door. Then I can't do anything.
(俺は違う部屋のベッドで寝る。君たちの扉の前にはティムを立たせておくよ。そしたら俺は何もできない)」
確かに、それなら――――とちょっと心が揺らいだ。バッグハンドルをぎゅっと握っているとマックスは何かを放って寄越してきた。
それは透明のセロファンに包まれた、ナイトウェア?ご丁寧に品の良いゴールドのリボンも飾ってある。



