Fahrenheit -華氏- Ⅲ


「その写真どーするの?」恐る恐る聞くと


「SNSにUPします」と瑞野さんはあっさり。


待って!それはマズイ!”優里”こと瑠華だって見れるわけだし。


「人の写真を勝手にあげるのはやめてくれ」流石に常識外れだ。俺が語気を強めると


「勿論、部長の顔は隠しますよ。でも二村くんは絶対気づくはず」


出たな、二村の名前が。


「二村に見せびらかしたかったらヤツと二人っきりのときにやってくれ」


「それじゃ意味がないじゃないですか。だってこれは二村くんに対する当てつけですもの」と瑞野さんは顔をしかめる。


当てつけ?その為だけに俺を誘ったのか?


この記事に二村が気づくんだったら当然、瑠華だって気づくはず。


「そんな回りくどいことしてどーしたいわけ?」俺は何とかSNSに記事をあげることを阻止させたかったから、何とかしようと必死だった。


「回りくどくなんてないです。だって二村くんは緑川さんと一緒にいるわけですし。あたしだって男の人と一緒に居たっていいじゃないですか。それに向こうだってSNSにもう記事UPしてるし」


瑞野さんはあるSNSの画像を見せてくれた。それは二村と、顔はスタンプで隠してあるが明らかに緑川と思われる女に違いない、二人がワイングラスで乾杯をしていた。記事には”メリークリスマス!婚約して初めてのクリスマスイブ。彼女は妊娠中だからノンアルワインだけど雰囲気出ていいよね~”と書かれていた。見ている分には幸せカップルの一文だが。


はぁ


俺は深いため息を吐いて


「そんなの単なる対抗じゃん」と瑞野さんは復讐と言ったが、これが何の復讐になるのか。やってることガキの喧嘩じゃないか、言うことは心に仕舞って言うと


「それでも効果はあるんです」と瑞野さんが頬を膨らませて口を歪める。こうやって見ると歳相応の可愛い仕草だが、騙されるな啓人!


まるで得体の知れない肉食獣を前にしたように分かりやすく警戒していると、「くすっ」と瑞野さんが喉の奥で笑った。




「そんなに”優里”さんに見られるのが怖いんですか?


”優里”さんて柏木補佐ですよね」