Fahrenheit -華氏- Ⅲ


瑠華と泊まる為リザーブした部屋は都内でも五つ星ホテル。ロビーには大きなクリスマスツリーが飾ってあってゆったりとしたクリスマスソングが掛かっていた。ホテルは当然カップルだの夫婦だのと思われる宿泊客が多く目立つ。


瑞野さんと来るつもりは最初から全然なかったわけで。しかし何故こーなった……


俺は今そのホテルにチェックインをしている。流石に瑞野さんと泊まるわけには行かないから部屋で軽くルームサービスでも取って”取引”をおしまいにする気だった。瑞野さんと俺は―――傍から見てどう見えるのだろう。カップル?夫婦…ってことはないか…


瑞野さんは俺がまさかこんな所に連れていくとは思わなかったみたいでちょっと驚いたように喉を鳴らした。


当然の反応に「やめとく?」と苦笑いで言った。


『やめます』と言ってくれれば取引を後伸ばしにできる。後伸ばしにしたって解決にならないのに。


しかし


「やめません」


瑞野さんは何か強い意志を持った光を称えた目を上げる。


部屋は最上階の47階。皮肉にも、瑠華のマンションと同じ階だ。予約したときは敢えてそうしたのか何も考えてなかったのか、今の俺には分からないが、


俺のリザーブしたスイートは、都会的でありながら、優しさ漂うインテリアやアートに満ちた空間が魅力的だ。リビングとベッドルームが独立した100平米の「パークスイート」はすべて角部屋で、2方向の大きな窓からはシティ感あふれるビル群や緑豊かな一帯など、東京の多彩な表情を楽しめる。室内はグリーン、ブラック、ベージュを基調に、自然を意識したアースカラーで統一。落ち着きのあるインテリア。


「わぁ……凄い…。こんな所はじめて」と瑞野さんは口元に手をやって目を開いている。それは瑞野さん歳相応の反応のように思えて何か企んでいるようには思えないが……油断は禁物だ。


瑠華んちと似たようなインテリアだがここはあくまで瑠華の家ではない。


俺は四人は裕に座れると言うソファに腰を下ろし、「食事したら”取引”だって言ったよね。ルームサービス取るけど、それでいい?」とわざとそっけなく言った。


油断したらダメだ。また瑞野さんの演技に騙される。俺は分かりやすく警戒してたのかな。


くすっと瑞野さんはちょっと笑い、「簡単なものでいいです。あまりおなか減ってないし」と言いながら俺の横にちゃっかり腰掛けてきた。


俺は思わず瑞野さんから距離を取るため、尻をずらす。


だがそれを悟られてはならない。平常心を保ちながらルームサービスのメニュー表を手に取った。