Fahrenheit -華氏- Ⅲ



医師が立ち去って数分後、まるで扉を蹴破る勢いで瑠華が入ってきた。


え――――?何で――――


瑠華!?


瑠華は走ってきたのであろうか肩で息をしている。俺の様子を一目見ると目を大きく開き




「―――ご無事でしたか……」




息も切れ切れだ。


瑠華が目を開いたままベッドに腰掛けたままの俺の全身を一瞬で上から下まで見渡した。


「あー、ごめんごめん!佐々木(かどうか知らんが)が大げさに言ったんだろうな、あいつ。ごめんね、心配かけて。でも何で……」




何で―――マックスと……最愛の娘のユーリと再会できた筈なのに。




綾子から事前に聞いていた。


『柏木さんには内緒でって言われたけど、彼クリスマス、サプライズで娘とこっちにくるみたいよ』


今頃、最愛の娘ユーリに会ってる筈であろうに。


俺のことを聞いて駆けつけてくれたってわけ?


そんなことを考えていると瑠華の全身から力が抜けていくのが分かった。元々高いヒールだったのもある。それが傾いた瞬間が分かったが、一瞬だったから俺も反応できず瑠華を支えることができなかった。瑠華はその場にぺたりと座り込んで






「あなたが無事で良かった」





瑠華は顔を覆った。声を震えさせ、嗚咽を漏らしながら―――


「瑠華―――………」


俺、サイテーだ。本来なら俺なんかより大事な娘と再会できて嬉しい筈なのに、俺の方を選んでくれた。そして俺なんかの為に涙を流してくれている。


それに嬉しさを感じていた。