Fahrenheit -華氏- Ⅲ


♠ K ♠


タクシーが突っ込んできたときは流石の俺もビビった。一瞬……単位にして刹那の時間死を覚悟したのも事実だ。


けれど衝突したのは助手席側だったし、衝突した反動で割れた窓ガラスで肘を軽く切ったぐらいで済んだのは奇跡と言うのか。


しかし突っ込んできたタクシーの運転手は今にも死にそうに顔を真っ青にさせ、すぐに警察と救急車を呼んだ。警察は分かるけどね、救急車は大げさじゃね?だって俺歩けるし、頭打ったわけじゃないし。


しかし割とすぐに到着した警察に軽く事情を説明していると、これまたすぐに救急車が到着し、「大丈夫です」と言ったがタクシードライバーも警官も救急車に乗ることを強く勧めてきた。


と言うわけで今に至る。


「あー、結構深くいっちゃってますねぇ」と緊急処置室に運ばれた俺は脱いだ上着、ワイシャツの上から染み出る血を見て看護師さんが苦い顔つき。


深く、と言ったがそれ程痛みはない。


「でも縫う程ではないですね」と当直の医師が捲ったワイシャツの袖から直に俺の肘をまじまじと見て、脱いだワイシャツの肘に消毒液を塗り込んでいったが、そっちの方がいてぇよ!


「外にお連れ様がいらしゃってますけれど説明してきます」と看護師が出て行った。お連れ様?もしかして瑠華??と一瞬思ったが


「会社の方のようですね。男性二名です」と看護師さんが戻ってきた。


オトコかよ!


「勘違いなさっているようですので私が説明してきます」とまたも看護師さんが出ていった。


怪我をした部分にガーゼを当て、やや大げさでは?と思ったぐらい包帯を巻かれた。


「一応目に見える怪我はこれで済みましたが、もしかして頭を打った可能性もあります。今日は時間外なので検査はできませんが明日必ず検査に来てください」と非常勤と思われる医師に言われ、俺はうんざりしたように頷いた。