Fahrenheit -華氏- Ⅲ


「もしかして”優里”が瑠華だと瑞野さんは気づいたかもしれない」


「でもあたしだと分かる投稿は一度もしてませんよ?」


でも俺には分かった。”優里”ユーリ、July。


瑞野さんは流石に瑠華に娘がいることは知らない筈だが、何かで感づいたのかもしれない。


「分からないけどタイミング的に怪しい。やっぱりあなどれないよ瑞野さんは」


「けれど敵意あるDMではないし。あの、この瑞野さんのアカウントは二村さんともつながってるみたいで」と瑠華は眉間に皺を寄せる。二村は―――瑞野さんの記事を自由に見れる?そこに意味があるのだろうか。


「……分かった。このまま様子を見よう」


結局、そこに落ち着くことになった。てかそれしか方法がない。


「でも危険だと思ったらそのSNSアカウントはすぐ削除して」と言うと瑠華は小さく頷いた。元々真剣にしているわけじゃない。削除することに何の躊躇いもない筈だ。


「ところで瑠華は何で瑞野さんとSNSで繋がろうと思ったんだ?」


気になっていたことを聞くと


「”知人”が教えてくれたんです。瑞野さんの投稿に二村さんのスニーカーらしきものが映っていて、二人の関係がまだ続いていたのなら……もしくは本心を知りたくて」


”知人”―――と言うのはあの二村が仕向けたピンクの髪の男か。俺にとってはまだ敵か味方か分からないが、瑠華はその男をある程度度信頼しているようだった。二村とグルだと知っていてどうやってその男を手の内に入れたのか謎だったが瑠華は頭が良い。うまい具合に操っているのだろう。


そう言う―――ことか。


「てか瑠華、佐々木もフォローしてたよな。あいつ、女の子からフォロー来たってぬか喜びしてたぞ」ま、それで俺も気づいたわけだけど。俺は思わず苦笑を浮かべると


「佐々木さんぐらいなら害がないかと、それに今回の件にまるっきり無関係ですし」


害がない?無関係??ひでぇ言われようだな佐々木…哀れ佐々木、可哀想に佐々木……でも「くくっ」どうしても笑いが堪えられなかった。佐々木は1ミリも瑠華に男として意識されてないってワケか。


まぁ”優里”が瑠華だと言うことが判明して良かったのか?俺は”ドライフラワー”を歌いだしたくなった。あの歌詞が瑞野さんが二村に対する気持ちがそうであって欲しいとも思ってるのかな。


瑠華は瑠華なりに動いてくれていた―――が、瑞野さんは




『柏木補佐が、イヤな女だったら良かったのに。そしたらあたしももっとやりやすかったのに。


あの人は優しすぎる。


だからあの人に二村くんは倒せません』





そう言ったんだ。じゃぁ自分だったら二村を倒せる?


一体瑞野さんは二村の何を知ってると言うのだ。