潰した空き缶を乱暴にシンクに投げ入れると大きな音を立てて、シンクの中でそれは跳ね上がり、しかしバウンドして隅の方で落ち着いた。
「You said you got rid of the flies, but you better watch out, okay? There will be repercussions.
(コバエを払ったと言ったが、気を付けた方がいいぞ?いずれしっぺ返しがくる)」
「Great. I've already calculated that.(上等よ。そんなの計算済だわ)」
本当のことだ。あのマックスの足元にも及ばないコバエ、自称伊藤を黙らせる手立てなんて幾らでもある。
マックスは電話の向こうで小さくため息を吐いた。
「Is it revenge against me? Or is it a vendetta against my ex-boyfriend?
(それは俺に対する復讐か?それとも別れた彼氏への腹いせ?)
何で……
何であたしが啓と別れたこと知ってるの?
いや、そもそもあたしは啓と付き合ってることこの人に言ってはいない。
きっと、カマを掛けてるだけだ。挑発に乗っちゃダメ。
「You don't seem to be on much business, so I'm hanging up.
(大した用件じゃないようだから切るわ)」
「Wate…(待って…)」とマックスはまだ何か言いたそうにしていたけれど、あたしは強引に通話を切った。
ムカつく。ムカつく、ムカつく、ムカつく!!
何であんたなんかに啓の存在をチラつかせられなければならないの!
ギリギリとシンクのへりを握り、そこから軋んだ音が聞こえてきそうだった。
あたしは食器棚からバカラのグラスを取り出すと、カウンターに並べていたスコッチの一つの瓶を取り上げた。瓶からスコッチをグラスに流しいれ、一気飲みしたときだった。
ピコん…
またもスマホに通知が来た。性懲りもなくマックスからメールかと思ったが、それはあたしが最近始めたSNSの通知で、最近記事を上げてないから何かと思ったら、DMが一通届いていた。
送信先はと”みゆぅ@miz_miyu”となっていてあたしは目を開いた
瑞野さん――――?
まさか”優里”があたしだとバレた?と一瞬汗が額に浮かんだが、DMを開くと
”突然のDM失礼します。
優里さんは何となく信頼できる人だと思って勝手ながらDM送らせていただきました。ごめんなさい。
約束された未来を取り返すのはどうすればいいんでしょう。私は奪い返す勇気も度胸もありません。
優里さんならどうされますか?”
約束された未来。奪われた未来。
それは二村さんとの未来ですか―――?
あたしはスマホを握ったまま、ただ何もできずその場に座り込んだ。



