しかし助かった。
今のところ、啓は瑞野さんが妊娠していることを露にも知らず、ただ出向の件に関しては悶々としているようだが。
同時に二村さんんもこの出向に関しては瑞野さんに何か聞きたそうにしていたが、瑞野さんは彼に言うつもりもないのか彼は少しだけ苛立っている感じがする。バックに瓜生常務が居ても、副社長の娘と結婚することを知っているならば、常務に万が一瑞野さんの妊娠を知られたら中絶させられてしまうだろう。それだけは避けたい。やはり瑞野さんの妊娠は何としてでも隠し通さなければならない。
母になろうと決意した瑞野さんを、たとえどんな形であろうとあたしは守らなければならない。
「香坂さんからさっき連絡が来て、明後日マルーナホテル使えそうだって。練習できるよね。柏木さん仕事終わり行ける?」と聞かれ、あたしは頷いた。
「佐々木も、記録係についてきてくれ」と啓が佐々木さんを見ると「分かりました!」と佐々木さんは元気よく手を上げる。
「マルーナホテル?」と瑞野さんが首を傾げ、あたしは新年会の催し物の当番に当たってしまったことを軽く説明した。
「部長と柏木補佐がダンス?それは見ごたえがありそうですね。ふふっ」瑞野さんは砂糖のように笑う。
こんなに可愛いくて性格のいい子と―――啓。
軽々しく、あたしが傍に居て妊婦の瑞野さんをサポートするって言っちゃったけど、
ホントはちょっと怖い。



