『What?(何の事?)』と惚けることもしなかった。
心音の反応に―――確信した。
マックスにバラしたのは心音の意図してやったことだ。けれど心音も誰かに―――ううん…
啓―――に頼まれたからだ。
啓は一週間ちょっと悩んだ、と言っていた。振り返るとそれぐらいの時から啓の様子が少しおかしかった。
心音を送っていく空港内でも、妙に心音の方を気にしているようだったし。だからあたしは二人を快く送り出した。
あたしに話せない話題があったとしても気にならなかった。
信用していた。
だから敢えて『何を話したんですか?』と聞かなかった。
けれどその時点で啓は悩んでいたのだろう。
急にどこかへ行こうと誘ってきて、そのうえそれ以上のことはしない。気分じゃないのかと思ってあたしもそれ以上を求めなかった。そもそも体の繋がりだけが全てではないのだ。
あたしには一緒に居て、二人同じ景色を見て、同じものを食べて、二人で顏を見合わせて笑い合える、それだけで充分幸せだった。
啓は時々、『どこか遠くへ行きたい』と滲ませていた。
あたしたちの最後のキスは―――
あのリムジンの中。
キスと一緒に、リムジンに感情を置き忘れてしまえれば楽なのに―――
啓は自分を『強くない』と言った。
それはあたしも一緒。
あたしだって強くない。
あのリムジンは―――今、どこへ向かっているのだろうか。



