Fahrenheit -華氏- Ⅲ



♠ K ♠


20XX年11月3日



また夢を見た。


あの夢だ。


東京の夜空の下、どこかのビルの屋上で、瑠華は白いワンピースのような見ように寄っちゃウェディングドレスのようにも見えるドレスを着ていた。


二日連続で同じ夢だ。今日は三日目。


一つ夜を過ぎると、一歩瑠華が歩を進め、また一つ夜が過ぎると、また一歩…と言う具合に、瑠華の体はどんどん俺から遠ざかって行く。


走り寄り、止めたいのに何故か俺は金縛りにあったかのようにその場を動けない。


「やめろっーーーー!!」


そして俺は毎回こう叫ぶ。


その後の展開を見ることは―――今の所はない。


だが、確実に東京の夜の街は瑠華の体を飲み込もうとしている。


目が覚めると、全身が汗でぐっしょりとしている。


起きたばかりは体が強張って、指先一つ動かすのでさえ時間が要する。



一体、いつまで―――


いつまで続くんだろうか、この夢は。


そして瑠華があの東京の夜景に消えていく日は


いつかくるのだろうか。


考えると、それだけで体が強張る。


あの子供の手は”あれ以来”見ていない。


”あれ以来”と言うのは、俺が瑠華に別れを告げたその日だ。


俺が瑠華に別れを告げ三日経った。


三日間、俺は極力瑠華と目を合わせないよう、会話を交わさないよう努めた。



―――疲れた



前は瑠華の顔を見る度心躍って、ドキドキしたりキュンキュンしたり…


俺は女子高生か。


いや、今日日(きょうび)の女子高生だってキュンキュンとか使わなねーだろ、普通。


瑠華も同じ様……なのか、そうでないのか、相変わらずそっけないし淡々としている。変わらずだ。


独りだけギクシャクしていてかっこ悪い。


けれど、瑠華にも多少の変化があったようで、いつもなら遅くまで残っている時間帯、その席に彼女の姿はなかった。当然佐々木も先に帰っている。


独り寂しく残業をしていると


「お疲れー」


一瞬、二村かと構えたが


「綾子?」


“一応”声と姿は“女”であるが…


「何だよ、書類の不備?だったら就業時間にしてくれよ、こっちは書類作りで忙し…」


言いかけた言葉に、ドンっ!とロエベのモカブランのバッグを目の前に置かれて、PCのモニターを遮られる。


「んだよ!」思わず綾子を睨み上げると、綾子は帰る所なのかホワイトベージュの上品なパンツスーツにキャラメルベージュのポンチョコートを羽織っていた。


「今日は終わりにしたら?あんた酷い顔色よ。風邪でもひいた?」


と指摘され、俺の眉間に指さし。思わず寄り目になり


「だったら何だって言うんだ。俺の顔色とお前には何の関係もねーだろ」と手でしっしっと払う仕草をすると


「どーせ、進んでないんでしょ。私が奢るからマシなもの食べなさいよ」


と再び指摘が入り、もしかして瑠華が綾子に何か言ったのかと思ったが、


「裕二が心配してたわよ」


あ、そっちか…