Fahrenheit -華氏- Ⅲ


♥ Ruka ♥



「こちらは最新の機種でして、動画や画像なんかもとてもきれいで…」


会社の近くの適当に入った携帯ショップの男性の店員さんは丁寧に案内してくれた。


「何でもいいです、使えれば」


とそっけなく答えると、店員さんはぎこちなく営業スマイルを作りながら


「では私共はやはりこちらの最新機種をオススメいたします。今流行りのSNS等で利用する写真がとてもきれいに…」


SNS…


あたしはやらないけれど―――


「じゃぁそれを」


またもそっけなく言い、店員さんは今度はハッキリと苦笑を浮かべ、しかし慌ててその苦笑いを仕舞いこみ、カウンターに案内。


「お色はどうなさいますか。ダークブラック、スノウホワイト、ナイトネイビー、ローズーピンク、ウィステリアパープル、こちらの機種は五色の展開になっておりますが、ローズピンクはやはり女性に大変人気があって」


「何でもいいです。在庫があるのを」


またも気のない様子で言うと


「えっと……では在庫を確認してまります」店員さんは腰を浮かせた。


あたしは並べられたサンプルのスマホの裏面を一通り眺めて


「すみません、このウィステリアパープルで。在庫ありますか」


と聞くと、店員さんは目をぱちぱちさせながら


「あ、はい!今確認させていただきます」と慌ただしくスタッフルームへ走っていく。


ウィステリア


―――Wisteria








紫の藤




光源氏が最初に愛した人は―――藤壺。