Fahrenheit -華氏- Ⅲ



♠ K ♠


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どこだここ。



最初に思ったことがこの一言だった。


びゅうっと冷たい風が俺の頬を刺すように撫でていった。


その冷たさから体を庇うようにきゅっと抱きしめた。


きょろきょろと辺りを見渡すと、そこが東京の夜―――


空を見上げるとくすんだ夜空に、まるでイミテーションの宝石のように鈍く光る星がまばらに散っている。


目線を戻すと、数メートル先に東京の街の夜景が見えた。


七色に輝くありとあらゆる光の中、東京タワーの赤い色だけがはっきりと見て取れる。


また一層強く風が吹き、ここがどこかの屋上だと言うことに気付いた。


ふわり


白い布のようなものが視界の端に写った。


そちらに視線を向けると、無表情の瑠華の横顔があった。


足元まで伸びた長いレースのような素材、肘の辺りでふわりと広がるベルスリーブの袖。白いワンピースともウェディングレスとも取れる。


その裾を揺らし、瑠華は東京の街を見下ろしていた。


感情のない目。温度のない目。


彼女の白い裸足の足が一歩踏み出した。数歩先は壁も柵もない―――まっすぐ歩いたら、そのまま夜の街がブラックホールのように彼女を呑み込むだろう。


「瑠華っ!」


俺は手を伸ばし叫んでいた。


瑠華が長い髪を揺らして、ゆっくりと振り返る。


瑠華は無表情ではなかった。ほんの少し哀しそうに―――何かを呟いた。口は動いていたが風が彼女の声をさらっていって俺の耳に聞こえなかった。


瑠華は前を向くと、また一歩と歩き出した。





「やめろ!」




やめろーーーーーーっっ!!!!





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