Fahrenheit -華氏- Ⅲ


♠ K ♠


20XX年11月9日


役員の会食まであと二日と言う日だった。


刻一刻と迫る日付にそわそわしてくる。


全ては11日…もしくは日をまたいだ12日に分かることなのに。それまでに何もできない自分が歯がゆい。


昨日、紫利さんから電話が掛かってきた。11日、神流グループの名前で予約が入ったことを。人数は13人。


紫利さんに全てを託すしかない。


しかし、まだ不透明な部分が俺の脳を不快に満たす。


そして二村の動きも気になる。


ヤツは11日、勝利を得るだろうが、本当の意味で11日が闘いの始まりだ。


勝利を確信しているのかヤツは余裕飄々で俺の周りを付きまとってくる。


俺が11日の会食のことを知らない、と思っているのだろう。


「部長~今日もかっこいいスーツですね!どこのですか?」コピーを取りに行った際、図ったように二村が来た。


「コルネリアーニ(※)だ」俺はそっけなく返す。あくまで不機嫌を装って。
(※:コルネアーニはイタリア発の高級ブランドスーツです♪)


「コルネアーニ?」


「一着22万だ。触るなよ、汚すなよ」俺は二村を指さし威嚇。


「22万!」


二村は大げさに驚いた。


「二村、また油を売ってるのか。神流部長に近づくな、と言った筈だが?余計な情報を“うっかり”漏らされたら困る」


村木が俺より不機嫌な顔で二村の背後に立ち、腕組み。


「すみません」二村は大人しく謝った。


「神流部長も、二村から情報を引き出そうとしないでくださいよ。うちは今大型案件を抱えている。横取りされたら困りますからね」


「それはこっちの台詞ですよ。以前俺の契約をポシャったときに、あなたが邪魔したように、ね」


俺は村木を睨んだ。


半分本気で半分演技だ。


俺たちが険悪な仲であることを二村に植え付ける為。


「私は何もしていませんが」と村木が意味深な笑みを浮かべる。


「そうですね」俺はそっけなく返し、コピー機から離れると、デスクに戻った。


瑠華は―――不在だった。


トイレか、一服かどちらかだろう。


コピー機の前で村木とやりあっている姿を佐々木はハラハラと見守っている。


俺が席に戻ると「大丈夫ですか?」と佐々木は不安げ。


「ノープロムレブだ、お前が心配することはない」俺は軽く手をあげた。


その時だった


綾子から内線電話が鳴ったのは。