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『どうして部長は柏木補佐と別れちゃったんですか』
瑞野さんの問いかけに、俺は黙ることしかできなかった。
うまく言い訳もできなかった。
結局、何も答えず
「仕事、始まるから」と言ってその場を逃げ出した。
瑞野さんもそれ以上は追及してこなかった。
俺、逃げてばっかだ―――
『あたしは、『あたしが部長を好き、って言いましたか?彼女にしてください、とか言いました?』と聞きました。
あたしは―――……』
あたしは―――……の後に何を続けようとしていたのだろう。
「―――…と、啓人」
裕二に名前を呼ばれてはっとした。
「おいおい、しっかりしろよ」
「そうですよ。貴重な時間を削って大事な“会議”をしているんですから、しっかりしてください」
と目の前で相変わらず厭味ったらしい陰険村木が不機嫌そうにビールジョッキを傾けていて、
「分かってますよ」俺はやさぐれ気味で残り一口のビールを煽った。
俺たちは今、会議と称して個室のある居酒屋に来ていた。
何が楽しくて野郎同士で個室!!
しかも裕二ならいざしらず、村木も一緒とは!
こんな日が来るとは想像できなかったぜ。
「で?どうするんです?11日の件。日付が分かったぐらいで我々はどうにもできませんよ?」
「潜入捜査でもするか?とは言っても銀座の超一流クラブだぜ?当然一元さんお断りだろうし。俺ら若者が早々尋ねられる場所でもねーだろ」
裕二がため息を吐きながら焼き鳥を口に入れる。
最近、まともな食事を摂ってないからか、食べ物の匂いだけに胸やけしそうになった。俺はひたすら枝豆を口にしてやり過ごしていた。
「潜入捜査は無理だ。俺も村木サンも顔を知られている」
「じゃぁ…」村木が言いかけて、裕二を見る。
「いや!絶対無理っ!無理無理!」裕二は慌てて手を振る。
「それはもう考えてある。
紫利さんに頼んでおいた」
空になった枝豆の殻を殻入れに放り投げ
「ユカリ―――……?」裕二は首を捻ったが
「なるほど」と村木は顎に手を置いて頷いた。
「『なるほど』って……お前が手を出した美人の人妻!?」
裕二が目を丸め
「んん゛っ」と村木が口元に手をやり咳払いをした。
仕方ない。俺たちは(前は)根っからの女好きだったわけだしな。



