逃げられるものならお好きにどうぞ。



「お姉さんの家も分からないし、俺の家に連れていくのも何だしさ。とりあえず近くのホテルまで連れてきたんだよ」

「……」



――あれだけ飲ませておいて、何て白々しい。
いや、出されるままに飲んだ自分が一番悪いということは分かっているんだけど。



黙っていれば、何か勘違いしたのか男の子は言葉を続ける。



「もしかして疑ってる? ……大丈夫、何もしてないよ。まぁしてほしいなら、それはそれで構わないけど」

「いえ、別に疑ってるわけじゃ……」

「そう? まぁお姉さんに欲情はしないから、安心してよ」



私を安心させようと思ったのか、にっこりと人好きのする笑みを浮かべた男の子は、僅かに濡れていた髪をタオルで拭いてから自身の着ていたTシャツに手を伸ばした。多分シャワーでも浴びていたんだろう。



――というか、やっぱりこの子、失礼だよね? いや別に欲情してほしいと思っているわけではないんだけど……何なんだろう、このモヤモヤ感は。女としての何かを傷つけられたような気がする。



言葉を返さず黙っていれば、いつの間にかすぐそばまで近づいてきていた男の子に顔を覗き込まれる。