「椿の分は貸しだからな」 「……えぇ、マスターってばケチだな」 「当たり前だろ。いいから、さっさと帰って休め」 マスターに見送られるまま店外に出て、近場まで呼んでおいたタクシーに乗り込む。 「黒瀬くん、家の場所言える?」 「んー……」 熱があるせいで眠たいのか、とろんとした目をしている黒瀬くんは、いつもよりゆったりとした口調で何とか住所を口にした。 行き先を聞いた運転手は、直ぐに車を発進させる。 そして、夜の街を走ること十数分ほどで、タクシーは停車した。