逃げられるものならお好きにどうぞ。



「……あのさ、」



――けれど、黒瀬くんがその手を振り払ったことで、彼女の手は宙で固まることとなった。



「さっきから君、誰? これからデートだから邪魔しないでほしいんだけど」

「……っ、なっ……」



固まる女性。その大きな瞳はさらに見開かれて、今にも飛び出してきそうだ。

というか、私も一緒に固まっているのだけど。



――え? 絶対に他人ではないよね? 彼女、あきらかに黒瀬くんの名前を呼んでいたし。



黒瀬くんは、呆然とする私の左手をとって歩き出す。

女の子は放心状態で、もう追ってくる様子は見られない。