逃げられるものならお好きにどうぞ。



すっと通った鼻筋に、形のいい唇。無造作な黒髪にアンニュイな目元が、どこか色気を感じさせる。


歳は二十代半ばといったところだろうか。


中々に整った顔立ちをしている男の人だ。
――まぁ、私のタイプではないけど。



勝手に分析していれば、男の子の視線がこちらに向けられた。

その口許には緩やかな弧が描かれていて、黒曜石のように美しく黒い瞳に真正面から射抜かれる。



「お姉さんって何歳(いくつ)なの?」

「……いきなり年齢を尋ねるなんて、失礼じゃないですか?」

「そうだなぁ……三十歳くらい?」

「っ、……まだ、二十七です」

「あ、やっぱり? それくらいかなと思った」

「……」



――何なのこの人……‼



薄い笑みを貼り付けた男は、カウンターに肘をつき頬杖しながら、まるで値踏みするかのような視線をぶつけてくる。



初対面にもかかわらず不躾な態度を取られて、普段温厚な私の苛々ゲージもグングン上昇中だ。……まぁ元を辿れば、三奈に放置されて不貞腐れていたからっていうのもあるんだけど。



目の前の男の子から三奈に視線を移せば、彼女はまだタイプの男性にお熱のようだ。



――三奈には後で連絡をいれておけばいいだろう。


もう帰ろうと腰を上げようとすれば、バーテンダーが私の目の前に琥珀色の液体が入ったグラスをコトリと置いた。