「ほら、だから言っただろ? 夜道は危ないって」
耳元で、声が聞えた。ぎゅっと固く閉じていた目を開ける。
そして、その僅か一瞬で――目の前にいた男が、宙を浮いた。
数メートル先まで吹っ飛んでいった男は、ピクリとも動かない。
恐る恐る背後に振り向けば、そこには予想通り、頭の中に思い浮かべていた男の子の姿があって。
「な……何で此処に?」
「ん? 何でって……ずっと後ろにいたから?」
――ずっと後ろにいた? ということは……私が路地裏に連れ込まれる場面もずっと見ていたってこと?
気づいた事実に、それならもっと早く助けてほしかった――とも思ったけど。
助けてもらったことは事実だから、私からはそんな苦言を呈せるはずもなくて。
「というかあの人……まさか、死んでないよね……?」
「あはは、お姉さんってば面白いこと言うね。死んでたら俺、人殺しになっちゃうじゃん。さすがに捕まるのは嫌かなぁ」
――冗談だと分かっているのに、冗談に聞こえないから怖い。



