反論できなかった。
楽しかったのは、事実だったから。
悔しいけど、正直少し、テンション上がってた。
私はペットボトルの蓋を回して、渡辺くんの横に腰掛ける。
さっき投げた時の衝撃で、炭酸がいつも以上に弾けて暴れていた。
一口飲むと、炭酸がパチパチと体中を刺激する。
コメント欄が勢いよく流れ続けてワクワクする感覚に、炭酸の弾ける音がよく似ていた。
「承認欲求ってさ、結構中毒になるんだよ」
渡辺くんは、私の思いを見透かしたように言った。
中毒……。
確かに、そうかもしれない。
「さて、そんな中毒中の朝比奈さんに新しい依頼です」
そう言って、スマホの画面を私に見せてきた。
今度は、SNSで炎上している地下アイドルだった。
男性ファンとのツーショット写真が流出し、裏切り者として叩かれている。
だけど本当は、相手はお兄さんだったみたいだ。
「最悪……。この人、相手はお兄さんだってきちんと言ってるのに」
「ネットなんて事実より、面白い方を信じる世界だから」
確かにそうだけど……。
私たち放課後またここに集合し、“カップル煽り配信”を行うことにした。
わざと視聴者を刺激し、話題を奪うため。
配信開始前、制服で学校バレしないために渡辺くんが持ってきていたグレーのパーカーを借りて羽織った。
身長180近い彼のパーカーは、160センチの私にはブカブカで肩も落ちて、袖も腕まくりをしても大きさが目立ってしまう。
「いいねぇ。彼氏のを借りて着てます感が出て、カップル動画に最適じゃん。しかもめっちゃかわいいし」
か、かわいいって。
そんなに簡単に言わないでよ。
調子狂う。
私がこめかみをポロポロかいていると、『緊張しすぎ』って渡辺くんが笑った。
「だ、だって、顔近いし……」
「演技なんだから我慢しろって。カップルの距離じゃなきゃダメだろ」



