「あれ、もしかして、男慣れしないタイプ?」
私の耳元で不敵な声を出す。
「なっ……ちょっ……何よ!」
あまりに近い渡辺くんの顔に、心臓が耐えきれなくなってうるさい。
頬も熱を持ち出して、私の顔、多分、真っ赤だ。
「おまえさ」
不意に、渡辺くんが真顔になり真剣な声になった。
「本当は、今の自分捨てたいって思ってんじゃないの?」
「……え?」
「さっきも言ったじゃん。無理してんのバレバレだって」
何も反論できなかった。
図星だったから。
「心無いコメント来んの本当は怖いのに、自分の居場所見つけるために配信続けてんだろ?」
な、なんで……?
なんで、渡辺くんはこんなに私の気持ち気づいてるの?
渡辺くんは私のスマホを返すと、今度は自分のスマホを触り出した。
「これ、見てみろ」
そう言って、別の配信画面を見せてくれる。
そこにうつっていたのは、私もよく知っている、人気配信者の女子高生だった。
そして、現在大炎上中だ。
悪意ある書き込みによって、“性格最悪女”として叩かれている。
「コイツ、本当は何一つ悪くないよ」
渡辺くんが静かに言う。
「でも、一回炎上したやつなんか、誰も助けない」
私は画面を見つめた。
「じゃあ、どうするの?」
私が聞くと、渡辺くんがクイっと片方の口角を上げる。
「もっとデカい炎上を作る」
「もっとデカい炎上?」
「世間って、次の獲物を見つけたらすぐそっちに行くから」
「そんなの……めちゃくちゃだよ」
「だけど……」
渡辺くんは、言いながらどこか寂しそうに目線を伏せた。
「だけど、俺らがやれば、こいつは助かるから」
意味深な言葉。
自分から炎上を作るなんて、普通なら考えられない。
そんなの普通におかしい。
普通なら……。
考えながら、ハッとした。
私、そもそもみんなの言う“普通”から逃げ出したかったんじゃないの?
その言葉が嫌いで吐き気がして……。
それなのに、今の私って“普通に普通に”って言い過ぎだ。



