「な、何で私だってわかったの?」
「何でって、声で?」
渡辺くんは、私の隣に来て座わる。
「クラスで愛想笑いしてる時と、配信で笑ってる時。んで、今みたいに魂の抜けたような声?」
肩と肩がぶつかる距離で、渡辺くんが口角を上げ微笑んだ。
「同じ声」
私を指して、今度はイタズラな笑顔になる。
鼓動が高鳴った。
私、今まで誰にも気づかれないように生きてきた。
笑って、合わせて、空気になって。
お母さんの言うように、普通に普通に接してきたんだ。
なのに、この人だけは、私を見抜いていた?
「おまえさ、無理して笑うの下手すぎなんだよ」
知ってるよ……。
だって、どうやって笑ったらいいのかわからないんだもん。
膝を抱えて身を丸めると、私のスマホをヒョイっと取り上げて操作し始める。
「ちょ、ちょっと……」
「じっとしてろって」
スマホを奪い返そうと手を伸ばすと、渡辺くんはそれから逃げるように手を高く上げる。
その間も、器用に何かをタップしていた。
しかも、配信サイトにログインされたままだし……。
「おまえさ、毎回毎回タイトルダサすぎなんだよ」
「ま、毎回って……もしかして、いつも見てたの!?」
私が聞くと、渡辺くんは一度スマホの画面から私に視線を戻して笑いながら頷いた。
最悪だ……。
終わった……。
よりにもよって、学校一の人気者で問題児の渡辺くんに見つかるなんて。
彼は、勝手に私の配信タイトルを書き換えた。
【いい子やめたいJK、深夜に全部暴露します】
「な、何これ!!」
「バーカ。こういうのが人来んだよ」
「ちょっと、そういうのいいから、やめてよ」
私は必死に腕を伸ばしてスマホを彼の手から取ろうとした。
だけどその瞬間、渡辺くんが私の手首を掴んだ。
渡辺くんがグイッと顔を近づけてくる。
ピクッと肩が震えて、私は思わず顔を背けてしまった。



