炎上代行~キミとなら、最悪でもいい~


「だけど、面白いのがさ、あんなに妹に対して最悪なコメント送ってきてた奴らがさ、次に炎上した動画があると、そっちに行ってパッタリコメントが来なくなったんだ」

「………」

「その時思ったよ。炎上って、次の獲物が現れた瞬間、興味が移るんだって」

「でも、よかった。妹さんへの悪質なコメントが来なくなって」

私が安堵のため息をつくと、渡辺くんは切なく目を細めて小さく笑った。

「あいつ……もう、周りの目に耐えられなくなって、中三の夏、家を出て行ったっきり、戻ってこなかった」

……えっ?

「ネットに殺されたんだよ」

……嘘。

渡辺くんに、そんな過去があったなんて……。

だから渡辺くんは、炎上させることにこだわるんだ。

「俺が代わりに燃えれば、助かる誰かがいると思って」

「……渡辺くん」

「妹を助けられなかった分、誰かを助けたいんだよ」

気がつけば、頬に大粒の涙が流れていた。

私、渡辺くんは、ただ炎上を楽しんでる悪い奴だと思っていた。

意味もなくネットを荒らして、悪質なコメントに笑って。

だけど、炎上させることにこんな気持ちが込められていたなんて……。

この人は、誰かを救いたくて、自分が悪者になっていたんだ。

「渡辺くんは、ヒーローだよ」

私は涙を拭いながら言う。

渡辺くんの力のない目が揺れて、涙が滲んでくる。

涙を堪えるように唇を噛み締め、私から視線を逸らした。

「そんなカッコイイもんにはなれてないよ。実際、妹を守れなかったわけだし」

渡辺くんが自嘲するように笑った。

そうかもしれないけど、それは渡辺くんのせいなんかじゃない。

妹さんのことはとても悲しいけれど、そのことがあったからこそ、今、渡辺くんに救われている人、たくさんいると思う。

「渡辺くんは、私を助けてくれたし、たくさんの人の心を救えてると思うよ」

私が言うと、渡辺くんの瞳がらポロポロと涙がこぼれ落ちた。

嗚咽が溢れ、目元を隠して泣いている。

その時。

また渡辺くんのスマホが激しく揺れ出した。