君と終わった街で

次に目を開けた時。

知らない天井が視界に入った。

白い天井。

薄暗い部屋。

ぼんやりした頭で数秒見つめて、それから文姫はゆっくり瞬きをする。

……違う。

知らない部屋じゃない。

ここ、洸太の部屋だ。

その瞬間、一気に記憶が戻ってくる。

交差点。

洸太。

倒れたこと。

そして――昨日のLINE。

胸の奥が小さく痛む。

身体を起こそうとして、文姫は顔をしかめた。

頭が重い。

熱っぽい。

その時。

「起きた?」

低い声が聞こえた。

文姫が顔を向ける。

キッチンの方から洸太が歩いてくる。

部屋着姿だった。

髪も少し乱れていて、たぶんずっと起きていたんだろうと思う。

洸太はベッドの横へ座り、小さく息を吐く。

「めちゃくちゃ熱出てる」

文姫は視線を逸らす。

「……ごめん」

「なんで謝んの」

呆れたみたいに言いながら、洸太は額へ手を当てる。

その手が、少し冷たくて気持ちよかった。

文姫の胸が小さく揺れる。

昔からそうだ。

洸太はこういう時、変に優しい。

だから困る。

「病院行こうかと思ったんだけど」

洸太が静かに言う。

「とりあえず寝かせた方がいいって思って」

文姫は小さく頷いた。

喉が少し痛い。

身体もだるい。

でも、一番苦しいのは別だった。

昨日からずっと。

胸の奥が重たい。

洸太は少し黙ってから、静かに口を開く。

「……昨日から、ずっと連絡返ってこなかったから」

その声は、思っていたより弱かった。

文姫は視線を落とす。

「ごめん」

「だから謝んなって」

洸太は苦笑する。

でも、その笑い方は少し疲れて見えた。

「文姫、昨日のあと完全に様子変だったし」

静かな声だった。

責める感じじゃない。

ただ、本当に心配していたのが伝わる。

文姫は布団を少し握る。

聞かなきゃいけないと思った。

ちゃんと。

逃げずに。

でも、怖かった。

もし本当に。

あのLINEの相手が、洸太にとって特別な人だったら。