君と終わった街で

洸太だった。

黒いジャケット。

少し乱れた髪。

スマホを見ながら、何かを探すみたいに辺りを見ている。

その瞬間。

文姫の胸が大きく揺れた。

どうしてここにいるんだろう。

偶然?

それとも――

洸太がふと顔を上げる。

目が合った。

時間が止まる。

洸太の表情が変わった。

驚いて。

次の瞬間には、明らかに焦った顔になる。

信号が青へ変わる。

人の流れが動き出す。

洸太はそのまま真っ直ぐ文姫の方へ歩いてきた。

「文姫?」

近づいてきた声が、少し震えている。

「お前、顔……」

文姫は返事をしようとした。

でも上手く声が出ない。

熱で頭がぼんやりしていた。

視界も少し揺れている。

洸太が目の前まで来る。

その瞬間。

張っていたものが、全部切れた。

安心したのかもしれない。

会いたかったのかもしれない。

自分でも分からない。

ただ、身体から力が抜けた。

「……文姫!?」

洸太の声が遠く聞こえる。

倒れそうになった身体を、洸太が咄嗟に抱き止める。

熱い。

自分の身体なのに、異常なくらい熱かった。

洸太の胸へ額が当たる。

その瞬間。

文姫はふっと力を抜いてしまう。

安心する。

悔しいくらい。

この人に触れると、安心してしまう。

「おい、文姫」

洸太の声が近い。

でももう、ちゃんと聞き取れなかった。

視界が白くぼやけていく。

最後に感じたのは。

洸太の腕の温度だった。