土曜日だった。
雲ひとつない晴天。
空気は少し暖かくて、街には春の終わりみたいな匂いが漂っていた。
洸太は待ち合わせの十分前には駅へ着いていた。
落ち着かない。
スマホを見て。
時間を見て。
また人混みへ視線を戻す。
二十八にもなって、何やってるんだろうと思う。
でも、それくらい今日を楽しみにしていた。
「……早すぎじゃない?」
後ろから声がして、洸太は振り返る。
文姫が立っていた。
白の薄手ニット。
淡い色のロングスカート。
晴れた日の光が似合う人だ、と洸太は思った。
高校の頃より、大人っぽくなっている。
でも笑った時の雰囲気は変わっていない。
洸太は一瞬見惚れてしまって。
そのまま素直に口に出た。
「普通に綺麗だなって思って」
文姫が目を丸くする。
「いきなり?」
「……ごめん」
「ほんと変わってないね」
困ったみたいに笑う文姫を見て、洸太も少し笑った。
その瞬間。
文姫は胸の奥が少し熱くなるのを感じる。
高校の頃も、洸太は時々こうだった。
思ったことを、そのまま言う。
照れもなく。
駆け引きもなく。
だから困る。
二人は駅前を歩き出す。
昼は洸太が予約していたカフェへ行った。
窓際の席。
柔らかい日差し。
運ばれてきたパスタを見て、文姫が笑う。
「高校の頃よりちゃんとした店知ってるじゃん」
「失礼だな」
「昔なんてチェーン店ばっかだったのに」
「金なかったんだよ」
その会話が妙に楽しい。
昔みたいだった。
でも、少し違う。
高校生の頃より、ちゃんと相手の顔を見て話せている気がした。
食べ終わったあと、二人は街を歩いた。
雑貨屋へ入って。
本屋へ寄って。
途中で文姫が猫の置物を見つけて立ち止まる。
「これ可愛い」
そう言って笑う横顔を見ながら、洸太は思う。
ああ、やっぱ好きだな、と。
文姫は文姫で、少し戸惑っていた。
楽しい。
想像していたよりずっと。
洸太といると、自然に笑える。
気を張らなくていい。
無理をしなくていい。
しかも今日は、ずっと自分を見てくれている感じがした。
昔みたいに苦しそうじゃなく。
でもちゃんと、特別に扱われている感じがする。
それが嬉しかった。
夕方。
ゲームセンターの前を通った時だった。
洸太がふと立ち止まる。
「あ」
「なに?」
「覚えてる?」
ガラス越しに見えるクレーンゲーム。
高校の頃、文姫が欲しがっていたぬいぐるみを、洸太が必死に取ろうとしていたのを思い出す。
結局取れなくて、二千円くらい無駄にした。
文姫が吹き出す。
「懐かし」
「マジで下手だった」
「今も下手そう」
「やってみる?」
「えー」
そう言いながら、文姫は少し楽しそうだった。
結局、二人で店へ入る。
高校生みたいだった。
でも、その時間がたまらなく愛しかった。
文姫は思う。
たぶん自分は。
思っているよりずっと、洸太といる時間が好きなんだ、と。
雲ひとつない晴天。
空気は少し暖かくて、街には春の終わりみたいな匂いが漂っていた。
洸太は待ち合わせの十分前には駅へ着いていた。
落ち着かない。
スマホを見て。
時間を見て。
また人混みへ視線を戻す。
二十八にもなって、何やってるんだろうと思う。
でも、それくらい今日を楽しみにしていた。
「……早すぎじゃない?」
後ろから声がして、洸太は振り返る。
文姫が立っていた。
白の薄手ニット。
淡い色のロングスカート。
晴れた日の光が似合う人だ、と洸太は思った。
高校の頃より、大人っぽくなっている。
でも笑った時の雰囲気は変わっていない。
洸太は一瞬見惚れてしまって。
そのまま素直に口に出た。
「普通に綺麗だなって思って」
文姫が目を丸くする。
「いきなり?」
「……ごめん」
「ほんと変わってないね」
困ったみたいに笑う文姫を見て、洸太も少し笑った。
その瞬間。
文姫は胸の奥が少し熱くなるのを感じる。
高校の頃も、洸太は時々こうだった。
思ったことを、そのまま言う。
照れもなく。
駆け引きもなく。
だから困る。
二人は駅前を歩き出す。
昼は洸太が予約していたカフェへ行った。
窓際の席。
柔らかい日差し。
運ばれてきたパスタを見て、文姫が笑う。
「高校の頃よりちゃんとした店知ってるじゃん」
「失礼だな」
「昔なんてチェーン店ばっかだったのに」
「金なかったんだよ」
その会話が妙に楽しい。
昔みたいだった。
でも、少し違う。
高校生の頃より、ちゃんと相手の顔を見て話せている気がした。
食べ終わったあと、二人は街を歩いた。
雑貨屋へ入って。
本屋へ寄って。
途中で文姫が猫の置物を見つけて立ち止まる。
「これ可愛い」
そう言って笑う横顔を見ながら、洸太は思う。
ああ、やっぱ好きだな、と。
文姫は文姫で、少し戸惑っていた。
楽しい。
想像していたよりずっと。
洸太といると、自然に笑える。
気を張らなくていい。
無理をしなくていい。
しかも今日は、ずっと自分を見てくれている感じがした。
昔みたいに苦しそうじゃなく。
でもちゃんと、特別に扱われている感じがする。
それが嬉しかった。
夕方。
ゲームセンターの前を通った時だった。
洸太がふと立ち止まる。
「あ」
「なに?」
「覚えてる?」
ガラス越しに見えるクレーンゲーム。
高校の頃、文姫が欲しがっていたぬいぐるみを、洸太が必死に取ろうとしていたのを思い出す。
結局取れなくて、二千円くらい無駄にした。
文姫が吹き出す。
「懐かし」
「マジで下手だった」
「今も下手そう」
「やってみる?」
「えー」
そう言いながら、文姫は少し楽しそうだった。
結局、二人で店へ入る。
高校生みたいだった。
でも、その時間がたまらなく愛しかった。
文姫は思う。
たぶん自分は。
思っているよりずっと、洸太といる時間が好きなんだ、と。



