洸太は小さく息を吐き、スマホをポケットへしまった。
帰ろう。
そう思って立ち上がる。
オフィスの照明は半分以上落ちていて、フロアは静かだった。
パソコンの電源を切る。
その途中で、ふと桃花のデスクが目に入った。
飲みかけのコーヒー。
開きっぱなしの資料。
ついさっきまで、そこにいた気配が残っている。
洸太は少しだけ眉を寄せる。
傷つけた。
たぶん、ちゃんと。
あんな顔をさせるつもりじゃなかった。
「ごめん、しか出てこなかった。」
断れなかった。
エレベーターへ向かう。
鏡張りの壁に、自分の姿が映る。
少し疲れた顔。
でも、どこか落ち着かない表情。
まるで高校生みたいだ、と洸太は思う。
明日好きな人と会えるだけで、こんなにそわそわしている。
二十八にもなって。
自分でも笑えてくる。
一階へ降りる。
ビルの外へ出た瞬間、夜風が頬に触れた。
東京の夜。
金曜の街は人が多い。
笑い声。
ネオン。
タクシーのライト。
その中を歩きながら、洸太は自然とスマホを取り出していた。
文姫とのLINEを開く。
少し迷う。
もう遅い時間だ。
でも。
明日よろしく、くらいなら送ってもいい気がした。
『明日、楽しみにしてる』
打ち込む。
少しだけ迷って。
それから送信した。
数秒後。
既読。
洸太の心臓が、小さく跳ねる。
『私も』
返事は、それだけだった。
なのに。
洸太は思わず立ち止まりそうになる。
街の喧騒の中で。
その短い二文字だけが、妙に鮮明に胸へ残った
帰ろう。
そう思って立ち上がる。
オフィスの照明は半分以上落ちていて、フロアは静かだった。
パソコンの電源を切る。
その途中で、ふと桃花のデスクが目に入った。
飲みかけのコーヒー。
開きっぱなしの資料。
ついさっきまで、そこにいた気配が残っている。
洸太は少しだけ眉を寄せる。
傷つけた。
たぶん、ちゃんと。
あんな顔をさせるつもりじゃなかった。
「ごめん、しか出てこなかった。」
断れなかった。
エレベーターへ向かう。
鏡張りの壁に、自分の姿が映る。
少し疲れた顔。
でも、どこか落ち着かない表情。
まるで高校生みたいだ、と洸太は思う。
明日好きな人と会えるだけで、こんなにそわそわしている。
二十八にもなって。
自分でも笑えてくる。
一階へ降りる。
ビルの外へ出た瞬間、夜風が頬に触れた。
東京の夜。
金曜の街は人が多い。
笑い声。
ネオン。
タクシーのライト。
その中を歩きながら、洸太は自然とスマホを取り出していた。
文姫とのLINEを開く。
少し迷う。
もう遅い時間だ。
でも。
明日よろしく、くらいなら送ってもいい気がした。
『明日、楽しみにしてる』
打ち込む。
少しだけ迷って。
それから送信した。
数秒後。
既読。
洸太の心臓が、小さく跳ねる。
『私も』
返事は、それだけだった。
なのに。
洸太は思わず立ち止まりそうになる。
街の喧騒の中で。
その短い二文字だけが、妙に鮮明に胸へ残った
