次の日の朝。
さっそくわたしたちは船に乗って海上を移動していた。
「ここが昨日のポイントです。お気をつけて」
昨日と同じ操縦士さんが言った。
「はい。ありがとうございます!」
わたしたちは昨日と同じように口と鼻のまわりを魔法のマスクでおおって、海に飛び込んだ。あいかわらずロウくんは麻酔銃を抱えて。
……ん?
海中の様子が昨日と違う。
海はあいかわらずきれいだけど、魚が全然いない。
その異変を感じ取ったのは、わたしだけではないようで。
「おい、昨日と比べて様子が変だぞ」
「やっぱりそうだよね!? 何が起きてるの……?」
昨日人魚と出会った場所に向かって泳いでいくと、視界がどんどん暗くなる。
こんなこと、昨日はなかった。
まるで、黒いもやでもかかっているような……?
そのとき。
とつぜん、ロウくんが海底に向かって麻酔銃を撃った。
「な、なに!?」
「クラーケンだ! クラーケンがオレたちの真下にいる! いまお前をねらってたぞ!」
「え!? クラーケンってなに!?」
「そんなことも知らないのか! でかいタコの怪物とでも思っとけ!」
ロウくんがそう言ったとたん、大きなタコの触手が真下から伸びてきた。
ほんとうだ、わたしたちをねらってる。
まさか食べようとでもしてるの……?
ロウくんは触手に向かって麻酔銃を撃つ。
しかし動きを抑えられたのはその触手だけで、次の触手がまたわたしたちをねらう。
触手がロウくんの足をつかんだ。
「ロウくん!」
「くそ……!」
ロウくんはその触手に麻酔銃を撃つけど、足をはなさない。
それどころか、麻酔が効いているのかゆっくりだけど、ロウくんを海底に引きずりこんでいく。
「おい! 根幹部分をしとめるしかない! お前がやれ!」
「わ、わたし!?」
「お前、泳ぎは得意なんだろ!」
ロウくんは麻酔銃をわたしに投げた。なんとかキャッチする。
――そうだ。わたし、泳ぎだけは得意なんだ。
わたしは麻酔銃をかまえたまま、迫りくる触手たちを避けて、体部分を探した。
触手が多くて、そして大きすぎて、なかなか見つからない。
だけど探し続ける。わたし、泳ぎと水中魔法だけは得意なんだから。ぜったいに見つけてやる。
わたしは触手を避けながら、探し続けた。
「……いた!」
わたしは体部分を見つけた。
黒いもやがかかっていて、よく見えないけど、たしかにそこにいる。気配を感じる。
「いけーーーーっ!」
わたしはクラーケンの顔をめがけて、麻酔銃を撃った。
……すると。
触手は力が抜けたように、海底に沈んでいった。
黒いもやもなくなっていく。
「ロウくん!」
足をつかまれていたロウくんも、解放されたみたい。
わたしは海中をただようロウくんを抱える。
「……ありがとう。よくやったな。……エリカ」
「ええ!?」
いま、エリカって名前で呼んだ!?
あの、「おい」とか「お前」とかでしかわたしを呼ばなかったロウくんが!?
「……なんで驚いてるんだ」
ロウくんは顔を赤らめながら言う。
……自分でもわかってるんじゃん。
「別に! はい、大事な銃!」
わたしはロウくんに麻酔銃を返して、ロウくんから離れた。
――そのときだった。
『よくやったわ。わたしのクラーケンちゃんを無事倒せたのね』
人魚さんの声だ!
わたしたちはふりむく。
「おい、まさか、今のクラーケンは……」
『そう。わたしの配下よ。あなたたちがほんとうに今日も来たものだから、あなたたちを試したの。そうしたら、見事な助け合いで倒してくれたわね』
今のクラーケン、人魚さんの配下だったの!?
そう思うと、ちょっとかわいそうなことしたな……。
人魚さんはわたしたちのことをじーっと見る。
『なんだか昨日とは様子が違うわね。完璧な絆とは言えないけど……絆のめばえを感じるわ』
「き、絆のめばえ?」
わたしは思わず繰り返す。
『そう。つまり、ぎりぎり合格よ。わたしのウロコをあげる』
そう言って、人魚さんはそっと自分のヒレからウロコを抜きとり、わたしに渡した。
エメラルドグリーンの、きれいなウロコだ。
「ほ、ほんとにもらっていいんですか!」
『ええ。良い絆を見せてくれてありがとう』
人魚さんはにっこり笑った。
「あ、ありがとうございます……」
ロウくんも恥ずかしそうにお礼を言った。
「じゃあ、船に戻ります! ほんとうにありがとうございました!」
わたしたちは船にむかって上へ上へと泳いでいく。
人魚さんが手を振っているのが見えた。わたしも振り返した。
さっそくわたしたちは船に乗って海上を移動していた。
「ここが昨日のポイントです。お気をつけて」
昨日と同じ操縦士さんが言った。
「はい。ありがとうございます!」
わたしたちは昨日と同じように口と鼻のまわりを魔法のマスクでおおって、海に飛び込んだ。あいかわらずロウくんは麻酔銃を抱えて。
……ん?
海中の様子が昨日と違う。
海はあいかわらずきれいだけど、魚が全然いない。
その異変を感じ取ったのは、わたしだけではないようで。
「おい、昨日と比べて様子が変だぞ」
「やっぱりそうだよね!? 何が起きてるの……?」
昨日人魚と出会った場所に向かって泳いでいくと、視界がどんどん暗くなる。
こんなこと、昨日はなかった。
まるで、黒いもやでもかかっているような……?
そのとき。
とつぜん、ロウくんが海底に向かって麻酔銃を撃った。
「な、なに!?」
「クラーケンだ! クラーケンがオレたちの真下にいる! いまお前をねらってたぞ!」
「え!? クラーケンってなに!?」
「そんなことも知らないのか! でかいタコの怪物とでも思っとけ!」
ロウくんがそう言ったとたん、大きなタコの触手が真下から伸びてきた。
ほんとうだ、わたしたちをねらってる。
まさか食べようとでもしてるの……?
ロウくんは触手に向かって麻酔銃を撃つ。
しかし動きを抑えられたのはその触手だけで、次の触手がまたわたしたちをねらう。
触手がロウくんの足をつかんだ。
「ロウくん!」
「くそ……!」
ロウくんはその触手に麻酔銃を撃つけど、足をはなさない。
それどころか、麻酔が効いているのかゆっくりだけど、ロウくんを海底に引きずりこんでいく。
「おい! 根幹部分をしとめるしかない! お前がやれ!」
「わ、わたし!?」
「お前、泳ぎは得意なんだろ!」
ロウくんは麻酔銃をわたしに投げた。なんとかキャッチする。
――そうだ。わたし、泳ぎだけは得意なんだ。
わたしは麻酔銃をかまえたまま、迫りくる触手たちを避けて、体部分を探した。
触手が多くて、そして大きすぎて、なかなか見つからない。
だけど探し続ける。わたし、泳ぎと水中魔法だけは得意なんだから。ぜったいに見つけてやる。
わたしは触手を避けながら、探し続けた。
「……いた!」
わたしは体部分を見つけた。
黒いもやがかかっていて、よく見えないけど、たしかにそこにいる。気配を感じる。
「いけーーーーっ!」
わたしはクラーケンの顔をめがけて、麻酔銃を撃った。
……すると。
触手は力が抜けたように、海底に沈んでいった。
黒いもやもなくなっていく。
「ロウくん!」
足をつかまれていたロウくんも、解放されたみたい。
わたしは海中をただようロウくんを抱える。
「……ありがとう。よくやったな。……エリカ」
「ええ!?」
いま、エリカって名前で呼んだ!?
あの、「おい」とか「お前」とかでしかわたしを呼ばなかったロウくんが!?
「……なんで驚いてるんだ」
ロウくんは顔を赤らめながら言う。
……自分でもわかってるんじゃん。
「別に! はい、大事な銃!」
わたしはロウくんに麻酔銃を返して、ロウくんから離れた。
――そのときだった。
『よくやったわ。わたしのクラーケンちゃんを無事倒せたのね』
人魚さんの声だ!
わたしたちはふりむく。
「おい、まさか、今のクラーケンは……」
『そう。わたしの配下よ。あなたたちがほんとうに今日も来たものだから、あなたたちを試したの。そうしたら、見事な助け合いで倒してくれたわね』
今のクラーケン、人魚さんの配下だったの!?
そう思うと、ちょっとかわいそうなことしたな……。
人魚さんはわたしたちのことをじーっと見る。
『なんだか昨日とは様子が違うわね。完璧な絆とは言えないけど……絆のめばえを感じるわ』
「き、絆のめばえ?」
わたしは思わず繰り返す。
『そう。つまり、ぎりぎり合格よ。わたしのウロコをあげる』
そう言って、人魚さんはそっと自分のヒレからウロコを抜きとり、わたしに渡した。
エメラルドグリーンの、きれいなウロコだ。
「ほ、ほんとにもらっていいんですか!」
『ええ。良い絆を見せてくれてありがとう』
人魚さんはにっこり笑った。
「あ、ありがとうございます……」
ロウくんも恥ずかしそうにお礼を言った。
「じゃあ、船に戻ります! ほんとうにありがとうございました!」
わたしたちは船にむかって上へ上へと泳いでいく。
人魚さんが手を振っているのが見えた。わたしも振り返した。


