迅が静かに言った。 迅「泣けない、の間違いでしょう」 私は息を止めた。 航斗が迅を睨む。 航「迅」 迅「失礼しました」 でも迅の目は、私から逸れなかった。 私は笑って、話を逸らした。 「ねえ、そろそろ帰るね。暗くなってきたし」 航「送る」 「……いいよ」 航「送る」 私は結局頷いてしまった。 前に別れた曲がり角が見えた瞬間、胸が苦しくなる。 この角を曲がったら、ひとりだ。 でも、前よりも怖さは薄かった。 怖さが薄れるのが、怖かった。