「……あの家。……空気、冷たい」 迅が眼鏡の奥で目を細める。 迅:「……なるほど。さっきのはそういう意味ですか」 航斗は何も言わなかった。 でも、扉を見つめる目が、少しだけ怖くなっていた。 俺は思った。 ……ひとりの部屋は、寒い。 温度じゃない。 誰もいないことが、寒い。 透羽は、あの寒さに慣れたふりをしてる。 慣れたふりをして、壊れそうな顔で笑ってる。 「……だめ」 誰に言ったのか分からない声が、夕方の赤い空に溶けた。 叶兎side end