叶兎side 角を曲がる直前、透羽が笑った。 笑って、手を振って。 その笑顔は、明るいのに冷たい。 透羽が消えていった角を見つめたまま、ぽつりと呟いた。 「……寒い」 斑が眉をひそめる。 斑「は?何がだよ」 答えなかった。 説明する言葉を、持っていない。 でも分かっていた。 あの扉の向こうは、誰もいない。 声もない。 笑い声もない。 ただ、静けさだけがある。 あそこに透羽がひとりでいるのを想像しただけで、胸が痛くなった。