伊織が息を呑んだ。
迅が黙る。
斑が固まる。
叶兎が小さく言う。
叶「……失わない」
航斗は、低く言った。
航「失わせねぇ」
その言葉が、怖かった。
優しいから。
信じたら、壊れるから。
私は笑って扉へ向かった。
「じゃあね〜」
背中に、航斗の声が落ちた。
航「……次、逃げたら追いかける」
「じゃあ大丈夫だね。私、逃げないから」
振り返らずに言って、手を振った。
……嘘つき。
私はきっと逃げる。
近づくのが怖いから。
でも。
追いかけると言われたことが、少しだけ嬉しかった。
その気持ちを認めるのが、もっと怖かった。

