玄関を開けた瞬間、冷たい空気が肌にまとわりついた。 誰もいない。 当たり前。 当たり前なのに、胸が痛い。 靴を脱ぎ、部屋に入って、電気もつけずにその場に座り込んだ。 静かすぎる部屋に、冷蔵庫の音が響く。 時計の針の音が耳に刺さる。 ……寒い。 叶兎が前に言っていた言葉が、頭に落ちてくる。 温度じゃない。 ひとりの空気。 私は膝を抱えて、笑った。 「大丈夫……」 笑って言うと、涙が出そうになる。 でも泣いたらだめ。 泣いたら、全部終わる。 私は立ち上がって、適当にテレビをつけた。